「浩二は、高校の時にバイトしてたのか?」


「バイトの経験はないですね。」


「そうだよな! 親父が俺の子供も含めて、あれこれ買ってくれてるし、小遣いも結構もらってるから、しなくてもいいいからなあ。」


「うん、助かってる。」

妻が相槌をいれた。


「それよりも世間のような、問題は別として、浩二の目が座ってるような気がしてならないんです。」


「何?」


「それならば、俺には答えが出せないぞ!」


「そうですね!」


「まあ、明日会社に行って、新人に聞いてみるから、この問題は、また、連絡することにして...」


「うん、お兄ちゃん、頼むわ。」


こうして、普通の会話だけして、義兄は帰って行った。


夕方になり、晩御飯の準備をしなければならない時間になったけど、妻は気になる事があるのか、いっこうにその場から立ち上がろうとしない。


「陰陽師さんが、来てからだよね?」

「うん、確かに、そうだな?」


「でも、何も無いって言ったんじゃあ?」


「そう、だから関係ないよね?」


「関係ないだろう?」


妻は、この話をしてから、納得したのか、晩御飯の準備にとりかかった。


19時になり、娘を呼び、ご飯を食べようとしたところに、息子が帰ってきた。


「早っ?」


「なんだ、これじゃあ家出じゃあないじゃないか?」


「おかえり!」


「ただいま!」


やれやれ、完全な取り越し苦労だったようだ。


「!」


息子の顔も、普通の時のようになり、とても素直な表情だった。


妻と顔を見合わせ、お互い、首を傾けた。


そして月曜日。


いつものように同じ道を通り、会社に到着した。


デスクに座ると、部長があわてたような顔をして、私の所にやってきた。


「おはようございます。」と、挨拶をした。


しかし、部長は返事もせずに


「黄金君!」


「はい!」


「ちょっと、この発注伝票を調べて見てくれ?」


「何かあったのですか?」


「伝票を見ると、3年前に退社した前任者の担当した工事伝票である。」


「これが何か?」


「この時の関係書類を全部持って23号会議室に来てくれ!」


「あ、はい! わかりました。」


書類を全部用意して、会議室に入った。


中に居るのは、直属の上司の部長と、購買課長、そして経理課長が座っていた。


「これが、その時の資料ですが?」


早速経理課長が資料を調べて始めた。


「やっぱり、そうですね!」経理課長はこう切り出してきた。


私にはさっぱりわからない?


「あっ! 黄金君はこれでいいから...」と、部長が言った。


3年前の資料を持っていったけど、国税か何かでひっかかったかな?


2時間後、部長から電話があった。


先ほどの資料の事は何も言わないが、部長は「ガミガミ」「クドクド」と、言いたい事を「ズケズケ」と電話の向こう側で言っている。


「はい! わかりました。」と言って、電話を切った。


わけも無く、上司から怒られたのは始めての経験である。


こういう時は、部長は、よっぽど、腹の虫の居所が悪かったのだろうと思うしかないと、あきらめた。


でも、何かふに落ちない...

土曜日から,何かに振り回されているようだ!


しかし面白くない。

今日一日も終わりった。


そして翌日の火曜日。

今日は、免許の更新に自動車運転免許センターへ行くため、有給休暇をとっていた。

朝から、小雨も振りだしている。


息子と顔をあわせ、


「今日は自動車運転免許センターに行くけど、学校が近いから乗っていくか?」

と、声をかけてみた。


息子は、眉間にしわを寄せ、


小さな声で


「うん。」と、うなずいた。


朝食もすませ、息子を後部座席に乗せ、先に息子の大学のほうへと車を走らせた。


「今日は、何時頃帰る?」


「...」


返事がない?


雑談をしようとしても、ルームミラーに写る、息子の顔は眉間にしわを寄せ、私のほうを睨みつけているようだ!


「また、おかしくなっているような?」


「どうした?」


「...」


時おり車のルームミラー越しに彼の顔を見ると、息子は、私を睨みつけいて、今にも私に襲い掛かってきそうな感じがして、「ブルブルッ!」と身震いが起こった。...