「そう、結局、その彼女は他の男性と結婚したから、それが答えなんじゃないのかな?」


「う~ん?」

「でも、お父さんからすれば、損したというかあ?...」

「なんか悔しくない?」


「ああ、彼女に気があればそうなんだろうが、その時は、しつこいようだけど、気がなかったから、なんとも思わないよ。」


「そっかあ~。」


「で、その彼女はもしかしてその時に?...」

先ほどの物音で、気を使っているのか、はっきりと限定できないようだ。


「うん、そうなんだろうな?」

「あの、実際に助けを求める声と物音で、玄関を開けたときに、俺に憑依したんだろう、きっと。」


「それも恐い話よね~。」


「ああ、恐いといえば恐い。」


「でも、わざわざお家にまで彼女が来たのはなんだろうね?」


「陰陽師の彼が言ってたのは、早く気づいて欲しいだとか、この人なら、あたしを助けてくれそう?とか思う人は、家の場所がわからなくても、すっと来るらしいよ?」


「えっ?」

「人の想いって恐いわね~。」


「うん、三つ子の魂百までっていうのも同じじゃないかな?」


「もしかして、彼が言ってたように、お父さんも霊とか、人の見えないものがはっきりと見えるようになるんじゃないのかな?」


「うん、実は既に見え始めている。」


「えっ!」

妻はまた驚いたようだ。

「昨日も玄関前を数人の人がちょろちょろちょろちょろ歩いてるんだ。」


「それは歩くでしょう。」


「うん、玄関前から庭先に入っていったから、玄関を開けてみたんだけど、誰もいない。」

「あれっ?って感じ。」

「今までは、スッと通るのが見えただけで、男性なのか女性なのかも全くわからなかったんだけど、今は性別も髪型も年齢層まではっきりと見えるんだ。」


「・・・」

妻は、また、黙って聞いている。


「つい先日も、白いパンツスーツ着ている若い女性が、うろうろしてるんだ。」

「あっ!、黒っぽいパンツスーツの女性もね。」


「ほら、ネットで掲示板に書き込んだりしても、翌日には、もう、家の場所がわかっているようで、助けを求めに来ているんだよ。」

「しかし、そういった女性達は、敷地内には入ってこれないけど。」

「にしても、ここがわかるのが不思議なんだよね。」


「じゃあ、あの彼女も?」


「うん、家の場所は知らないはずだよ?」


「じゃあ、霊として浮遊すればわかるのかな?」


「さあ、そこは陰陽師もわからないって、それに、彼はまだ勉強中だって言ってたし。」

「ほら、外国人の霊の話の例もあるし。」


「そうね、でも、あの時に憑依したって、それは怖かったわね?」


「怖いも何も、そんな生霊がとりついているなんて全然わからなかったよ、あの時に彼にそういわれるまではね。」


「じゃあ、もし、わかっていたら、どうしたの?」


「そりゃあ、相手の勘違いってものもあるし、思い違いってやつかな?」

「うん、そうだなあ~?」

「まず、話をしてえ。」

「そんな事かな、今考えられる事は。」


「で、あなたが好きって来ていたら?」


「そりゃあ、君と出会うまえだから、多分...」


「そうね、そうなっていたかもね?」


「で、逆に、あたしと出逢った後に、女性が来ていたら?」

妻は、この生霊の件に託けて、俺の本音というか何かを探り出そうとしているように思える。


「そりゃあ~?」

「同じだよ、まず話をしないと、どうともいえないから、わからないよ。」


「うん、だから、ずっとお話したくて、中々チャンスがなかったの。」

「でも、貴方の事がずっと好きでしたって言ってきたら?」


「それは君に話すつもりはない。」

「って、何も無い話は出来ないし、そんな事があったとしても、話す事かな?」

「俺にかまかけてるような気もするしね。」


「あっ、ごめんなさい。そういうつもりではなかったの。」


「そんなつもりって、じゃあどういうつもりなんだよ?」

ささいな事で、喧嘩になりそうな気がした。


「あのなあ?」

「日本人の8割が第一印象で人様を見るんだよ!」

「ということは、こういった8割の人は、自分の損得や勝ち負けばかり考えているんだよ。」


「多くの雑誌見ていても、損した事はないかだとか、得しましたか?とばかりの内容ばかりだし。」

「そんな、まだ無い事を根掘り葉掘り聞かれても、よくわかんないんだけど?」

「君も損得や勝ち負けばかり考えているから、俺の事が気になるんじゃないのかな?」


「って、ほら、その時の彼女だって、損したくない、傷つきたくないから気を引いていたのかも?」

「その挙句は、その生霊なんだから、そこのところをよく考えてくれればいいのに、といっても、本人は生霊となったのは気づいていないんだけどね。」


「でも、第一印象は大事でしょ?」


「だからあ、何故、そこにばかり精神を使うのかが不思議なんだよ。」

「人は人、自分は自分なんだよ。」

「まあ、こういう台詞を端的に使う人は、人の気にしているけどね?」


「そんな感覚だから、なんでも霊の仕業にする人が多いのも困るけどね。」


「そんなに多いかしら?」


「多いじゃん。」

「例えば、星座占いで、あいつは○○座だからこんな性格だとか、血液型がB型だからこうだとか。」

「信じるものは救われるんだよ、それなのに、自分と関係ない星座まで調べて、あいつはどうだとかってね。」


「クスクス」

妻は何か思い出したようだ。


「ん?」


「いや、そういわれると、そういった他人様の星座や血液型まで調べて、他人の事を悪く言う人が多いから、それを思い出して...」


「だってそうだろ?」

「自分が話題の中心に居たいから、そうやって関係ないのに、そんなにその星座の人の事を語るということは、その人物が気になっているからだよ。きっと。」

「だから、そういう性格の人は、全員ジェラシーを抱く人なんだよ。」