Occupation

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「今日は、残念な報告があります。」
「皆さんと共に、このミュージアムで働いていた、藤原知世さんが、退職される運びとなりました。」
「藤原さん、では、皆さんに挨拶を。・・・」
朝のミーティングの席で、事務局長の木村が言ったこの言葉で、わずか10人の職員達の中から、ざわめきが起こった。・・・

「あっ、おはようございます。」
「3年前、このミュージアムで働き出して、皆さんと仲良く、そして楽しく一緒に仕事を出来た事は、私にとって一生の思い出になります。」
「ここまで、仕事を教えてくれた皆さんには、どのようなお礼を言ってよいのか、言葉がみつかりません。・・・」
「・・・皆さんには、・・・とても、感謝しています。・・・」

涙で言葉が喉を通過してこない。
このようなお別れの挨拶は、誰でもそうであろう。・・・

「私事ですが、新しい夢に挑戦したくて、・・・」
「また、街中で私のことを見かけたら、気軽に声を。・・・」
「声をかけて下さいね。・・・」
「ありがとうございました。」
同僚に頭をさげ、やっとの思いで言葉にした挨拶で、涙が止まらなく、また、同僚たちも貰い泣きしている人もいる。

「藤原さん、頑張ってね。」
パチパチと鳴り止まぬ拍手の中、先輩の大河さんが激励の言葉を送ってくれる。
いつも愚痴を零し合っていた、由美子は俯いたまま、泣いている。・・・
由美子には、早くに転職の話はしていた。
そう、あれは昨年の11月だった。

いつものように仕事を終え、帰り道に立ち寄る、多国籍料理店で、由美子にこの転職を思い切って話した。

「ねえ、由美子?」
「私、ダンプに乗ろうと思ってるの。・・・」

「ダンプ~?」
「ダンプって、あの土砂とか砂利とか運ぶでっかいトラックじゃん。」
「またあ~、私をからかおうとしてもだめよっ。・・・」
「もぉ~、知世は人がわるいんだからあ~。」
「やあねえ~。・・・」

「からかってないよっ。」
「マジだもん。・・・」

「えっ?」
「・・・マジの話?・・・」
「でも、免許とか?・・・」
「それに、乗った事ないじゃん?・・・」

「そう、だから今、自動車学校に通ってるの。・・・」
「だから、遊べない日多いじゃん。」
「その時に通って。・・・」
「仮免は頂いて、来週から路上なのよ。・・・」

「でも、なんでダンプなの?」
「知世、背も高くないしぃ~、そんな体で大丈夫なの?・・・」

「うん、教習のトラックは6TONでぇ~、
あっ、4TON車と同じなのよ。・・・」

「4TONだの6TONだのって、私には皆同じに見えるわ。・・・」

「そだねえ~、で、そのトラックは小さいから、そこまで苦痛じゃないわ。・・・」
「だけどね~、ダンプとなると、これがでっかくてぇ~。・・・」
「運転席に乗るにも一苦労かも?・・・」

「ねえ、知世、一体どこから転職先がダンプってなったの?」

「うん、お金かな~?」
「ほら、男女雇用機会均等法ってあるじゃない。」

「うん、男女の賃金の差が無いから、今は女性が男性社会だった分野にも進出できるからねえ~。・・・」

「それで。・・・」

「そう、それで、本当はタンクローリーに乗りたいの。・・・」

「はあ~、知世はダンプだのタンクローリーだの、かけ離れた仕事ばっかに憧れてるのねぇ~。」
「こりゃあ、話になんないわ。・・・」

「うん、子供の時に一回大型ダンプに乗っけてもらった事があるの。」
「近くの丘の造成工事やってる時に。・・・」
「それで、”わ~”こんなにおっきいのお~って。・・・」

「それがあったからかな~?」

「それ、タンクローリーじゃないじゃん?・・・」

「そう、で、高校の時に何か資格を取ろうと思って、
ネットで遊んでて、危険物のおつしゅっていう資格を
見つけてえ~。・・・」
「その比較的簡単な資格を、ネットのメルマガを利用して、一生懸命勉強して取得したのよ。・・・」
「あっ、今のミュージアムでも、この資格持ってるから就職できたんだけどねっ。」

「へえ~、ミュージアムそんな資格いるのお~?」
「知らなかったあ~。・・・」

「そりゃあ、いるわよ。」
「ほら冷暖房のボイラーの燃料は軽油で~、それに事務局長もこの資格持ってるわよ。・・・」
「ボイラーの運転は、あの年金組のおじさん達がしてるけど、管理者は必要だからねっ。」

「で、どこでタンクローリーとダンプがつながるのよっ?・・・」

「うん、始めからタンクローリー乗ればいいんだけど、あの車は特殊なの。・・・」
「オーバーハングって、ほらバスなんか運転席が前のタイヤより、”ず~っと”前にあるじゃん。・・・」
「それと同じで運転には熟練が必要みたい。・・・」

「でも、女性ドライバー見かけるよ?・・・」

「そう、あの人達は自信があったのかも?・・・」
「私は、自身がないのかな~?・・・」

「それで半年位ダンプに乗って、それからまたまた、転職ってとこかな?・・・」

「でさあ~、そんなにお給料いいの?」

「うん、ダンプはまあまあかな~?」
「だけど、タンクローリーは、月40万位なのよっ。」

「ひぇ~、そんなに賃金いいのお~?・・・」

「それだけじゃあないのっ。」
「平ボディーとかウイング車に乗ろうとしたら、後、玉掛け)たまかけとかフォークリフトの免許も必要だし、それに手積み手降ろしって、肉体労働が多いしぃ~。」
「それ、考えると、ダンプとかタンクローリーはそれがないのよっ。・・・」

「へえ~、そんなものなの?」

「うん、後、結婚しても子供が出来るまで続けられるしぃ~。」

「また、子供に手がかからなくなったら、また、乗れるじゃん。・・・」

「確かに、子供の教育費とか係るしぃ~、後、家とかマンション買ったりするにも、いいかもね~?」

「でも、私には、ようわからん。・・・」
「知世おとなしいから、でも、この話は、マジで驚かされるよ。」
そんな具合で友人の由美子に話したのであった。

そして、今日、このミュージアムでのお別れの挨拶となった。
現実から目を背けたがる、今の大人たち、綺麗な仕事で高収入を得られるわけもなく、
また、刺激を求めるなら、こういった選職もいいのかもしれない。・・・

仕事も追え、多くの同僚達に送られ、その職場での最後の日は、これまでの人生にとっての一番の思いでとなった。

電車に乗り、いつも降り立つその駅で、過去、造成されたその丘が見えた。

その丘野辺は桜の花が満開で、鳥たちの歌声が聞こえてくる。
センチメンタルな気分に浸りながら、自宅にやっとたどり着いたのは、いつもより、回り道したからであった。

「ただいまあ~。」
いつものように優しく出迎えてくれる、母は、私の今にも泣き崩れそうな顔を見て、何を思ったのだろう。・・・

「おとうさん、ただいまあ~。」
先に帰宅していた父は、リビングで終始無言だった。

これは当然の事ながら、子供を持つ親としてみれば、やはり男社会のきつい匂いがする職に転職するのだから、いたしかないことだっ。・・・

また、この転職の話を切り出した時に、転職先のその会社は、厚生年金や社会保険などの福利厚生が整っているにしても、説得には時間も必要だった。

父が、何も言わないと言う事は、やはり”親”は”親”私のこれからについて、無償で応援してくれるということだろう。・・・

本来なら、嫁ぐ話で、この無言の父の姿を見るのが、私にとっても最良の形なのだが・・・
そういった、感傷に浸る1日であった。

翌日は土曜日。
朝早くから起きて、あの丘を歩いてみた。
昨日の夕刻の景色とはうって変わり、この桜は私のこれからの人生を激励してくれているようだ。
思えば、夏には男子と一緒に、この桜の木に群がる、自身の鳴き声が一番だと誇示する多くの蝉達を捕り、虫かごいっぱいにした記憶や、中学の時には、近所に住む、1つ年上の哲也に、この桜並木の下で、告白された事もあった。

振り返るにはまだまだ早い、やっと社会に乗り出したばかりの人生だけど。
短絡と呼ぶ”近道”の愚かさと、堅実という”遠回り”でも、一歩一歩踏み出す勇気が目覚め始めたのだろうか…

私の気持ちの整理をするには、この丘野辺の散歩は十分過ぎるものであった。
自宅に帰り、ミュージアムの面々と過去、研修会に行ったときの写真を見ると、自分のこれからについて自信を持って歩もうという決意をさせてくれた。

翌、日曜日は、前日の私だけの感傷セレモニーの効果で、母にいっぱい甘える時間を作る事ができた。

あけた、月曜日。
速達で届いたミュージアムの離就)りしゅう証明書を持ち、近くのハローワークに行き、早々に事務手続きを済ませた。
その場所では多くの人が次の仕事先を探しに来ているが、その表情はとても暗く見える。・・・
私は、次の就職先を見つけているからその気持ちは、わからないが、時には、堅実ばかりを追い求め、自分の行く場所を見失う人々が、自ら命を絶つ等ということを鑑みると、一概に短絡的思考を拒否する事は出来なかった。

火曜日の夕刻からは、ミュージアムが翌日休みで、送別会を開催してくれる同僚達との、ささやかな時間を過ごしに行った。

「知世、さあ飲めっ!」
あの由美子は、ハイペースでお酒を飲み、私に絡んでくる。

「でもなあ~、去年、知世がダンプに乗るって聞いた時は驚いたよお~。」
「で、それからは、今日のこの日が来ないで欲しいと思ってたんだあ~。」
「あたしゃ~、悲しいよお~。」
「でも、あんた、何故平気なのよお~。・・・」
この話には、この会に出席している一堂が、しみじみと聞き入っていた。

「うん、ありがとう。」
皆にお酒を注いで回り、その日は、、あのセレモニーで全て吹っ切れた私には、ほのぼのとさせて頂いた、1日だった。

そしていよいよ、水曜日、朝早くから目覚めた私は、新しい会社から支給された、ワークウエアに着替え、マイカーでその会社へ向かった。

「おはようございま~す。」

「おおっ、知世ちゃん、今日からかあ~、頼むよ~。」
その会社の社長が挨拶を交わしてくれた。

「他の奴らは、先に現場に行ったから、じゃあ行くか?・・・」
「で、あそこにある5号車が、知世ちゃんの乗るダンプだっ。」
「一応テストした車がいいだろうと思ってなっ。・・・」
この気さくな社長は、何を隠そうあの中学の時に、私に告白した哲也なのだっ。鍵を持ち、ダンプに乗りこんだ私は、エンジンをかけたその瞬間、今日からはプロドライバーなのだという、意識に目覚めた。

「でもなあ~、正直ビックリしたよ、俺も。・・・」
「タンクローリーに乗りたいから、それまではダンプ乗させてくれって来た時はなあ~。・・・」
「あの時の知世ちゃんの目は、真剣だったからなあ~?・・・」
助手席に乗り込んだ哲也が話す。

「あっ、この時間は表通り混んでるから、団地回って行こう。・・・」
隣で親切に教えてくれるこの哲也は、お父さんを5年前に亡くして、お母さんと2人でこの会社を継いでいる。
社員は社長以下14人、ダンプが8台に台車が1台、そして重機が6台ある。
ウインカーを右に出し、新しい会社から、この大きなダンプで今日の現場へ向かった。・・・

「デカイだろう~。・・・」
「まあ、智代ちゃんのあのテストの時の真剣さを見て、あっ、これなら大丈夫だなって思ったよ。」
「いるんだよなあ~、自信満々でテスト受けに来る男も。」
「だけど、いまいち不安な運転するしなあ~。」
「そういうやつらは、自動車で荒い運転してんだよっ。・・・」
「だから、その悪習がいつかは事故につながるしなあ~。」
「こいつらデカイから、その加害も大きくなるしなあ~。・・・」

確かに、大型車はデカイ!
運転席が高い位置にあるし、また幅も広い、長さは長くはないが、視界は広い。
しかし交差点で右左折する時は、乗用車と違い、その先を思った以上に直進させてハンドルをきらないと、内輪差が大きくあるこの車は、思ってもみない結果を生む。
それに、いくらパワーステアリングであるにしろ、普通車以上に回さなければならない。・・・

そういったイメージを頭で描きながら、右左折を繰り返し、今日の現場についた。
今日は、A市の埋め立て用の真砂土)まさつちの運搬である。
始めに、秤台)はかりだいにダンプを載せ、空重量を測る。
これは風袋)ふうたい重量といって、積載後の重量とを差し引いたものが正味の真砂土の量となる。

乱獲時代の約40年前には、このような装置はなかったらしい。・・・
秤台に載せると、側面の電光掲示板にOK!の表示が出た。

「よし、あの黄色いショベルの所にバックでつけて。・・・」
哲也の指示通り、その場所にバックで入場していく。

「ちゃんとブザーで教えてくれるから。・・・」
そのショベルの運転手の指示という事だ。

前進は比較的容易い)たやすい、しかし、バックとなると神経はかなり必要となってくる。

「ビッ!」
ショベルの合図で、その場に停車した。

「先に挨拶しておくか~。」
ダンプを降り、ショベルの所に行く私と哲也。・・・

「しげさんっ。」
ショベルのオペレータは、重松)しげまつ政雄という名で、哲也の声にショベルのエンジン回転をさげた。

「彼女、藤原知世ちゃん、今日からだからよろしく!」
哲也の紹介で頭をさげた。

「お~、この娘は、会社の近くじゃないか~。」
「テッちんの、将来の嫁さんかあ~?」
「じゃあ、手荒くいけねえな~。」
「はははっ。」
その言葉に、哲也は顔を赤くしたが、あの時は友達で行こうと話、特別なつきあいはしていない。
仮に付き合っていたら、タンクローリーの話も全くないはずだ。・・・
幼馴染だから無理も通ったのだろう?・・・

「よろしくお願いしま~す。」

「ということで、重さん一番頼りになるから。・・・」
「じゃあ、いよいよ行くかっ。・・・」
その哲也の言葉で、ダンプに再び乗り、その場所をスタートした。

「重っ!・・・」
思わず、ダンプの重さとハンドルの切れ味の感触に言葉が出た。

「そうだろうな~8TONは軽く増えてるからなあ~。」

「じゃあ、”カンカン”(秤)はかり)に載せて。・・・」

積載した砂の重量を測るため、先ほどの台の上にダンプを移動した。
しかし、空でなく満載のその重さで、少々てこづった。
側の電光掲示板のOK!のメッセージを確認し、やっとこの積荷の新しい安住の地へと向かう。・・・
空車ならばこの8速のチェンジレバーの4速スタートでよいが、荷を積載すると、2速からのスタートとなった。
また、この2速のチェンジ位置はこれから、荷を降ろすまでの結構な運転操作の負担となる。
「じゃあ、あの峠越えていくかっ。」
哲也の指示は鬼の指示に聞こえる。

出来れば、平坦地の走行が望ましいが、1日8往復しなければならないこういった作業は、時間との戦いと、
市街地走行による、塵埃)じんあいなどの粉塵予防として、そういった峠超えの経路となる。・・・

案の定、峠に入る前の交差点の信号は”赤”だった。
このスタート地点は、少し勾配地であり、2速ではスタート出来ず、1速からエンジンを唸)うならせての発進となった。・・・

いくら回転をあげても、エンジンは唸るばかりでスピードは増さない、やっとの思いで2速、3速とチェンジを変えるこの動作は、身長156cmの私には今までの仕事と比べれば、きつく感じる。・・・

登坂車線を通行し、後続車に道を譲りながら走行していると、1台の空ダンプが追い越していった。
そして、そのドライバーは、追い越しざまに私の方を見ている。

「おお~、あいつだよあいつ。・・・」

「運転が荒いとかって?」

「そうそう、あいつあそこに入ったんだ~?」
「社長に教えておけばよかったかな~?」
「ああいうやつは気をつけておけよ~。」
「仕掛けてくるかもわかんないからな~。」

「へえ~?・・・」
そのダンプは追い越すと、私の前に入り込んできた。
いっけん、後続車に道を譲ったように思えるが、この空ダンプだと迷惑をかけるようなスピード以上で楽に走れる。・・・

「ほらっ、早速、しかけてきゃあがった。・・・」
哲也は言う。
「あと100m登れば今度は下りだからなあ~。」
「排気ブレーキはストップランプ点)つかないから、下りは、あまりくっつくなよ~。・・・」
排気ブレーキはエンジンブレーキの一種で、レバーをONにすると、アクセルを弛めた時から、自動でブレーキが作動しアクセルを踏みなおすか、クラッチペダルを踏むとOFFになる。・・・

「グルルルルルルルル~、ブッシュ~ッ!」で、お馴染みのトラックやバス等の一種の鳴き声というか意思表示である。

やっと登りつめ、今度は下り坂に入った。
哲也の言った言葉を思い出しながら、その前方の空ダンプのマフラー部からは黒煙を確認した。
その排出回数は以上に多い。・・・
あきらかに、嫌がらせはされるとその時思った。

あちらは空、こっちは満載、積載重量の多いこちら側は、下り坂で増すスピードと重量により、更に加速度は増す。

「グルルルルルルルル~、ブッシュ~ッ!」
「グルルルルルルルル~、ブッシュ~ッ!」
と、こちらも排気ブレーキ併用で、そのスピードを下げながら、車間距離をとりながら道を下る。

その前方のダンプの走行動作は”ギクシャク”していると思えば、時には”ジグザグ”で走行する。

「しつこいなあ~?」
哲也が助手席で呟く。

四方八方注意しながら、その前方のダンプにも最大の神経も配る。
この長い下り坂で、そいつは3度も急停車まがいの走行を繰り返し、その度に追突しないようにと深くブレーキペダルを踏んだ。・・・

「ああいう奴、時には、いるからなあ~。」
「ドライブなら俺が運転するけど、仕事だからそうはいかないしなあ~。」
哲也の言葉に、今になって、この仕事を選んだ事をちょっぴり後悔した。
「でも、いいやつも多いしなあ~。」
「長距離やってると仲間が欲しいみたいだし、そういう奴が助けてくれる事もあるよっ。・・・」

下り坂走行も無事終わり、3車線の道に入ると、空ダンプは右側車線に変更してくれた。そして、3つ目の交差点で右折するみたいだ。

真ん中の車線を通行しながら、その空ダンプを追い越すと、その荒い運転手は、こちらをみていたが、”シカト”してやった。

「ふう~。・・・」

「ははっ、気にしない気にしないって。・・・」

「でも、大変だねえ~、運転もっ。・・・」

「初めだけだよ、そう思うのはなっ。・・・」
「今日、後7回ここを通る頃には、慣れてるよっ。・・・」

「うん、そだね~。」

「ほら、やっと言葉に成りだした。・・・」
そうだ、今日は緊張であまり話してなかった。
時間を見ると、まだ、朝の9時過ぎだった。

その真砂土を積載した場所から30分走った所の埋立地についた。
埋立地に入るのに、女性の交通指導員の支持を受け、その旗信号の手ほどきで難なく侵入出来た。
また、この指導員も女性である。
肌色は真っ黒であるのは、一日中炎天下の元での仕事だからであろう。

私に比べれば、かなり”つらそう”に思える。
あの指導員にも資格があるということは知っていた。
しかし、今、運転しているダンプよりは、断然給料は安い。・・・
どうせ資格をとるなら、この大型のほうがいいかも~?
一人優越感に浸りながら、後ろの積載物の解放場所へとついた。
「よし、あのおっさんの所だよ!」
その場所にも、案内係りがいて、その指示通りその場で左旋回して、ダンプをバックさせる。

左のバックミラーに写る、その案内係りの手招きにより、”ジワジワ”とダンプをバックさせ、停車の合図で止めた。
次に案内係りは、手を挙げ、ダンプしろとの合図を送ってきた。

そう、ダンプは運転の辛さが殆どで、積み込みはショベル、そして降ろしは、運転室内の油圧ポンプのスイッチを入れ、後はクラッチを合わせて、レバーを操作すれば荷降ろしが出来る、とても簡単な仕事である。

確かに、ミュージアムでの仕事のほうが随分と楽だけど、時間は経たない、そして日祭日が休みでないというデメリットもある。・・・

「じゃあ、挨拶するかっ!」
荷降ろしの終わった後、ダンプを降りて、その案内係の所に行った。

「マー君、彼女は藤原知世ちゃん、よろしく頼むわっ。」
マー君は、木原政雄といい、ヘルメットを脱いだその頭は坊主頭で、濃い髭が印象的な、重さんと同じ重機オペだった。

小太りな体系のかれは、バックミラー越にみると、”ぽてぽて”と歩く姿は、小熊のようにも見える。・・・

「あっ、社長の”コレ”かあ~、じゃあよろしくう~。」
マー君に挨拶して頭をさげたが、彼もやはり哲也の彼女と思われているようだ。・・・
こうして、一回目の荷卸しが終わり、再び積載場所へと向かった。

「お~お~。」
哲也は時おりすれ違う同じ会社のダンプに手を振っている。
また、新しい会社の同僚は、皆、すれ違いざまに、軽く手をあげてくれる。
そして、先ほどと反対側の登坂車線に入った。
こんどは空荷、軽やかにその道を登っていくと、あの先ほどのダンプが荷を積載し、黒煙をあげながら、走行している。仕返しをする必要もなく、関わりたくもないので、楽々追い越した。
「なあ~、逆の立場もあるんだよっ、だから、嫌がらせが倍になる時もあるから、
よく考えればいいんだよなあ~。」
哲也は喜んでいる。

10時に積載場所に戻り、また埋立地への往復の作業、あっという間にお昼となった。
そして昼食場所は、積載場所に設置してあるコンテナハウス。
他の同僚との顔あわせもここで出来た。
今日は一人休みで6台のダンプが稼動している。

ワイワイガヤガヤと、話のつきないその面々の中には、受け狙いだけでジョークを飛ばす、おつむの足らない仲間もいるようだっ。

また、このダンプの運転中には携帯もハンズフリーを使用すれば、いつでも友人と話が出来る。
今日休みの由美子も早速電話をしてきて、往復中の30分の間、ずっと喋っていた。

「ねえ、知世~。」
「あんたいつからダンプ乗ってるのよっ?」

「うん、今乗ってるよっ!」

「ええ~っ、運転ちう~?」
「すげえ~よ、知世って。・・・」

「んな事無いよっ。・・・」
「って、仕事は単純で簡単だしぃ~。」
「それにね~、ダンプ運転していて、街中を見下ろすといい男いっぱい歩いてるんだよ~。」

「ちょっと、知世ちゃん、気をつけてよ~。」
「見とれて事故起こすといけないしねっ。」
といいながらも、話を延々したのは由美子だった。

また、メールも積載と荷卸しの最中に出来る。
しかし、今までは、簡単なやりとりで何度も送受信を繰り返してたが、今度はしっかりと話の内容を目いっぱい打ち込んでからとなるが。・・・

(つづく!)

*危険物資格は比較的簡単な試験で取得できます。