Inpatient

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「ねえ、博美、いい人いるけど逢ってみる?」

「うん。」
美学時代の友達”ひかる”は、いつも世話をやいてくれる。
私の名前は、博美。
今年の春、美容学校を卒業し、ヘアーサロンに勤め始めた、1年生・・・

高校生の時、大学に進学するのが突然嫌になり、急遽)きゅうきょ、美容師の道を選び、美容学校に入学した。
美学に入って、他の人は、高校に入学する前から美容師を目指していたものや、当然、実家がヘアーサロンの人もいた・・・

美学の授業中も、ただ漠然と受けていたが、なんとか卒業でき、今のサロンへ、インターンとして就職した。
しかし、まだ資格がない私は、毎日毎日、お客さんの髪を洗うだけ、おかげで手は”ガサガサ”になって手が荒れていた。

今日は月曜日、サロンが休みで、同じように他のサロンに勤めた、ひかると、遊んでいた。

「今度は、しっかりね・・・」

「・・・」
私には、変な癖があると、中学校の時から同級生は仲良くしようとしなかった。

「博美、飽きっぽいからね~。」
そう、友人が言う、この飽きっぽいという癖があった。

「嫌なら、断ってもいいからね。」

ひかるは、言った。

いくら男性を紹介しても、長くて1ヶ月。短くて1週間しか続かない・・・
普通なら、異性を紹介することは全くなく、一回でも紹介しようとする人も中々
いない。
しかし、ひかるは、博美に、5人目の男性を紹介しようとしている。

「博美?」
「聞いてる?」

「うん、聞いてるよ・・・」

「ねえねえ、それよりひかるは何故ここまで私の事を思ってくれるの?」

「なんでだろうね~?」
「博美、可愛いし、優しいし・・・」
「同性から見ても…ね~。・・・」
「もし私が、男だったら、博美をくどくんだけどねえ~。」

「うん、ひかるだったら、くどかれたい・・・」

「私、レズっけないわよ?」
ひかるが言った。

「うん、私も相手は男性がいい。」

「あはははっ。」

飽きっぽいくなったのは、中学生の時からだけど、実は、他にも理由があった。

高校に入り、フラワーショップと、カフェが一緒になったお店でバイトした時に、
同じようにバイトしてた5歳上の浩二に一目惚れしたのだった。

浩二は、顔はあまり良くないけど、色黒で、細身だった。

そして身長も低かった。

浩二は、フリーターで、その店も長く勤める気配もなかったし、チャンスを
うかがってはみたものの、結局、浩二は3ヶ月後、辞めていった。
気持ちを引きずってはいけないと思いながらも、忘れられなかった。

ひかるは、バックから携帯を取り出し、彼氏に連絡した。
「あっ、正人?」
「私、私・・・」
「うん、じゃあ、そこで・・・」
ひかるは、正人に、友達を連れて来てと、連絡したようだった。

日はすっかり暮れて、19時になった。

「じゃ、行こうか?」

「うん。」

ひかるが、正人君と待ち合わせた場所に移動した。

正人は車を持っていない、ひかるは、いつもカフェとかで、待ち合わせていた。

今日は、その場所に行かず、そして着いた場所は、駅だった。

駅の側のその駐車場にひかるは向った。
1台の車のドアが開き、正人が降りた。

「正人君、車買ったの?」

「ううん、従兄弟のとか?・・・」

「ふ~ん。」
車の側にいったが、正人以外誰もいなかった。

「さあ、乗って乗って。」
正人が言った。

ひかるが、助手席に乗り、当然、私が後部に乗った。

「オッス。」

「こんばんわ。」
正人と、やっと、挨拶を交わした。

正人は身長180cm位あって、その車の天井に頭がつきそうだった。

正人の運転する車が走り出した。

「何処行くの?」

「うん、友達の所・・・」

どうやら、今度の男性は自宅で待ってるようだ。

もしかしたら仕事から帰ってないのかも?  そうも思った。

20分走ると、見覚えのある正人の家の近くだった。

美学時代から、ひかると一緒に正人の家に何度かいった。<

一軒の家の前で車は停車した。

「プップ~!」

正人は、クラクションを鳴らすと、2階の窓が開き、男性が覗いた。

その男性は手をあげ、又、窓を閉めた。
そして、玄関が開き、その男性は、こちらに歩いてきた。

「おいっ、涼、今日暇か?」

「ああ、いいけど・・・」

「じゃあ、彼女頼むわ・・・」

「頼むって、お前、俺、初対面だぞ?」
そういって、後部座席に座っている、私を見て、頭をさげた。

私も、この状況のなか

「こんばんわ。」
と、とりあえず挨拶をした。

「いいからいいから、私の友達で、岡田博美さん。」

ひかるが紹介してくれた。

「博美、可愛いでしょう。」

「可愛いって言われても・・・」
涼は戸惑っていた。

「わかった、じゃあ、俺も車出すから・・・」
涼は、家の中に入った。

「さあ、博美、降りて降りて。」
「それから、2時間後にいつものカフェでね・・・」
ひかるが言った。

私は、車から降ろされた。

涼が、家から出てきて、彼の家の敷地内にある、車に乗ってエンジンをかけた。

そして、私においでと手を振った。

振り返りながら、涼の助手席に乗った私を見た、正人は車をスタートさせた。

「ったく、正人はいつもこれだよ・・・」

「あのお~?」

「あっ、俺、涼。」

「で、何処に、行くんだろう?」
「この前のGWにも、夜中に電話をよこし、プチ家出の高校生を家まで送るらって、
駅まで迎えに来いって。」

「あっ、それで行ったの?」

「うん、行ったよ!

「で、二人の女の子を、100kmも離れた家まで・・・」

「その間、正人は、その子達に”クドクドクドクド”説教してた。」

「ふふっ。」

「それで、今日は何処まで送っていくのかな?」

「あっ、今日は違う・・・」

「えっ?」

「そうか、そうか、ひかるちゃんの友達だと言ってたな。」
涼は、車をスタートさせた。

「じゃあ?」

「うん、私も車に乗れって言われて、で、ここに来たの・・・」
ひかるに男性を紹介するからと言われてとは、言えなかった。

「そっか、じゃあ、博美ちゃん、邪魔者にされたんだ。」

「よし!」

「ぶらっとドライブでもする?」

「うん。」
涼は、今年京都の大学を卒業したばかりで、地元市内の銀行に就職したばかり
だった。
また、彼には、女性が側に居ても手を出さない、安全な男で、いつしか”ホモ説”
まで浮上していた。

しかし、涼に、アプローチかけた女性が、涼の好みでなかったため、手を出さ
なかったわけで、ごく普通の男性だった。

振られた側の女性も、色々と問題がある女性で、振られた腹いせに、その女性が、
涼がホモなる誹謗をしていた。・・・

私と涼を乗せた車は、海沿いに出た。

「博美ちゃんも美容師?」
涼は、博美の手を見ていた。

「そう、ひかると美学で友達になって・・・」

「ねえ、涼さんと正人君は、昔から?」

「そそ、幼稚園からず~っと。」

「あっ、高校は違った。」

「それと、正人は高校出て働きだしたけど、俺は上の学校いったから。・・・」

「何処の大学?」

「京都のね。・・・」<

「涼さん、彼女はいなかったの?・・・」
しまった! バカな事を聞いてしまった思い、赤面した。

「ん?」
「今は、いない。・・・」
「って、事は?」

「うん。」
「あっちでは、いた。」
「でも、大学生で付き合うのは、高校生で付き合うって事と、ちょっと違うんだ。・・・」
「高校の時は、なんでもかんでも Wet に考えるだろ?」
「だから、センチメンタルになったりするけど。・・・」
「大学に入って、男女が付き合うのは。・・・」
「なんて言うかな~。」
「Dryを、言葉に代えると?」
「うーん?」
「親元離れて寂しい気持ちも出てくる頃にー。」
「自然と、男と女が寄り合う不思議な時期があるんだ。・・・」

「ふ~ん。 なるほどね~。」
私は相槌をうった。

「あっ、”女””女”って、バカな男も沢山いるけど。・・・」

「で、出逢った男と女は、当然付き合いだして。・・・」

「楽しい、学園生活をenjoy)エンジョイしてるって、勘違いする。」

「あっ、面白くない話だね?」

「いいよ、もっと続けて?」

「そう?」
「えっと、どこまでだっけ?」

「enjoyだとか?・・・」

「そうそう、キャンパスに絵を描いてって、マジに思っちゃうんだね~。」
「だけど、3回生になると、就職がチラツキだして。・・・」
「それで、気持ちが冷めてきて。・・・」
「それだけじゃあ、ないんだけどね。」
「でも、それぞれが別の地域に就職しても、気持ちが残ってれば、再会出来る事も
ある。」

「涼さん、今は、彼女の事。・・・」
またまた、バカな事を聞いてしまった。

私は、ここまで人の話を聞きいった事はなかった。

「うん。 好きかな?」

「でも、好きと言うのは、想いが残ってるというのではないよ。」

車は、いつしか隣街に入っていた。

「彼女のほうは、今でも?」

「あ~、無い無い。」

「お節介な奴がいて、つい最近、彼女に男が出来たって、連絡してきた。」
「はははっ。」

「おっと、あれこれ話しすぎたようだなあ。」

「それは、そうと博美ちゃんは?」
涼は、私を”ちらっ”と見た。

「あっ、私?」

「私、付き合ってる人いない。・・・」

「そう?」
「こんなに可愛いのに?」
涼は、博美の顔を横目で”ちらっ”と、見た。

「そんな事無いよ!・・・」

ひかるは、どういうつもりなんだろう?
ふと、冷静な気持ちになった。

「ここまで1時間か?」
「じゃあ、家まで送ってくよ。・・・」

「うん。」

「どの辺?」

「あ~、幸町です。」

「了解!」
涼は、車の向きを変えて、今来た道を帰ろうとした。

「待てよ?」

「こっちがいいかも?」
と独り呟いて、湾岸線への方向に指示器をだした

「ちょっと、飛ばすよ!」

「うん。」

車は、Tool Gate)料 金 所を通過し、速度を上げていった。
開けていた窓から入ってくる、潮風は爽やかだった。

「そうそう、メールアドレス教えておこうか?」

「えっ?」

「こんな時は逆に、私に聞くんじゃないの?」

「えっ?」
「何で?」

「また、正人らに、何処かで車を、降ろされたら困るだろ?」
「しかし、正人、車買ったのなら言えばいいのに・・・」
涼は、博美との事を知らされてなかった。
「あっ、あの車は、従兄弟のだって。」

「あっ、そうなんだ~。」

「じゃあ、教えなくていいのか~。」
「そうか、ごめんごめん。」

「あのお~?」

「何?」

「私のメールアドレス聞いてくれないの?」

「あ、そうだね~。」
「じゃあ、教えて。」

「でも、今日は置いてきぼり食った?って、メールも変だしなあ~。」
涼は、この時点では、まだテンネン君だった。

車は、湾岸線を通過し、一般道に入った。
しばらくして、自販機が多く並ぶ場所に、車を止めた。

「何か飲む?」

「ううん。 いい。」

「博美ちゃん、アドレス教えて。」
飲料水を買った涼は、車に戻ると、聞いた。

また、この場所でアドレスを聞いてくれた事が博美は、嬉しかった。

「えっとお~、hiromi-0608-board@×××××ne.jp!」

涼は、素早くアドレスを入力した。

「もしかして、この0608は誕生日?」
「そう。」

「あちゃちゃ~、ダメだよアドレスに個人情報を入れては。」
「ん?」
「じゃあ、このboardってのは?」

「あっ、それは適当。」

「って事は、ふたご座?」

「そう。」
博美の飽きっぽさは、星座が影響しているのかも知れないかもと、星占いに、
はまっている、ひかるは感じていた。

「涼さんは?」

「俺?」
「俺は、9月10日で、乙女座かな?」
「よし!」
「えい~!」

「♪~♪」
博美の携帯にメールが届いた。

[これが俺のアドレスだよ!]
[涼!]

「そうそう、今度またドライブする?」

「うん。」
博美は安心した。

「あっ、忘れてた。」
「21時にカフェ・アンデュに来てくれって。・・・」

「えっ?」
「いいよ、いいよ。」
「あいつらほおっておけばいい。」
「家まで送って、それから正人に電話しとくわ。」

「でも?」
と、言いながらも、涼の言葉に甘える事にした。
そして涼は、私を家まで送ってくれた。
「ありがと。」

「いいよ。」
「また、メールするよ!」
「じゃ!」
涼の車は走り去った。

家に帰り、部屋でくつろいでいた。

「♪~♪」
[博美! 今日はごめんね~。]
[あれから正人に涼君から電話があって・・・]
[実は、涼君には、博美を紹介する話してなかったんだ。]
[正人も、その電話で、事実を説明してた・・・]
[それで・・・]
[涼君はどうだった?]
ひかるからのメールだった。

[うん。 別に気にしなくてもいいよ!]
[それと、何かおかしいなと思った。]
[涼君、テンネン君だったの。]
[と言っても、知らなければ、私もそうするかも?]
[涼君に、メールアドレスも教えたし、また、ドライブに行く約束したわ。]
[あっ、アンデュ行かなくて、ごめんね。]
ひかるに返信した。

「♪~♪」
[涼君がテンネン君って、何?]
ひかるは気になったのだろう、またメールが届いた。
[あはは、ごめん。]
[テンネン君という言葉は、気にしないで。]
[今度、逢った時に、話すわ。]
[ありがとう。]

「ピッ!」
翌日、仕事を終え、いつものように携帯の電源を入れ、受信をした。

「♪~♪」
[博美ちゃん、ごめん!]
[正人から博美ちゃんの事聞いて、ビックリしたよ。]
[これ以上話すと、言い訳がましいので・・・]
[で、金曜日の夜は空いてるかな?]
[涼。]
メールが届いていた。

自宅に帰り、食事も済ませ、涼にメールの返事を書いた。

[こちらこそ、ごめんなさい。]
[私は、正人さんの友達を紹介されると聞いていたの・・・]
[しかし突然涼君の家の前で降ろされて。・・・]
[その後は、涼君に中々切り出せなかったの。]
[でも、楽しかったよ!]

[それと、金曜日はOKです。]
[博美。]

「ピッ!」
涼に返信した。

「♪~♪」
[いいよ、その話はもう終わりにして。]
[じゃあ、金曜日は、博美ちゃんの家の近くの駅に行こうか?]
すぐに涼から返事が来た。

[うん、じゃあ、19時に駅まで来てくれる?]
「ピッ!」
私も、すぐ返事をした。

「♪~♪」
[わかった。]
[じゃあ、おやすみ。]

涼と待ち合わせの時間も決まった。
金曜日当日、駅で電車を降りると、涼の車が待っていた。
涼は手を降っている。

「博美ちゃん、こんばんわ。」

「涼君、待った?」

「いや、今来た所。」

こうして、涼との楽しい日々が始まった。
ひかるとは、お互い資格を取るために、実技や勉強等で、中々都合がつかず、
逢える日がなかった。

しかし、私が飽きっぽいと思ってる、ひかるは、毎日のようにメールを送ってきた。
今までは、男性とのつきあいが長くは続かなかったが、涼とは、2ヶ月を過ぎていた。

いつものようにドライブをするだけで、涼は、手も握ってくる気配は無かった。
そんなある日、涼とドライブに出て、ビーチの駐車場に車を止めて、涼と話していた。

「博美?」

「何?」

「好きな男いるのか?」

「ううん。いないよ!」
博美は、憧れの人の事は、完全に吹っ切れていた。

「じゃあ、博美は、俺がいなくなるかもって考えてるのか?」

「なんかさ~、こうやってドライブしてても、怯えてる気配が伝わってくるんだ。・・・」

「うん、実は私には姉がいたの。」
「私も姉の事が、大好きで大好きで。」
「だけど、私が中学生の時、朝、朝起きて来ないので・・・」
私は、その時の事を思い出して、涙が止まらなくなった。

涼は、黙って聞いていた。

「それでベッドに行ったら、お姉ちゃん冷たくなってたの・・・」
これが、博美がみんなから”飽きっぽい”と言われていた、全てだった。

「うん、わかった。」
涼は、優しく言った。

「それで、それで私が、人を好きになると、皆いなくなっちゃうと思えて、恐くて
恐くて。」

「もういいよ!」
「お姉さんの事は別として、そんな事ばかり考えてたら人生つまらないじゃないか。」
「辛かっただろうけど、俺に、話してくれて、ありがとう。」
涼は、正人から博美が飽きっぽい性格だという事を聞いていた。

ひとしきり泣いた博美は、目を閉じた。

涼は、まず博美の目から溢れた涙をハンカチで拭い取り、博美の唇に”そっと”
キスをした。

[完]