陰陽師 異変(二)

陰陽師 異変(二)

妻も息子の部屋に入ったきりで、2時間くらい経って、やっとリビングに降りてきた。

「お父さん、怒らないようにしてね!」

「何?」

「浩二が、大学を辞めたいって言い出したの?」

「え~っ?」

「何か学校であったのかな?」

「うーん?」

「よし、わかった、浩二と話してみる。」

「そうして、しかし、怒らないようにしてね!」

「怒るも何も、行きたくない理由を先に聞かないとなあ?」

「トントン!」

部屋のドアをノックした。

「…」
しかし、息子からの返事はない!

「浩二? ちょっと入っていいか?」

「…」

「カチャッ!」
ドアを開けて部屋に入ると、息子はベッドの上に座り、目をすえて私のほうを睨みつけている!」

一瞬、私の体が凍りついたような気がした!

「おかしい?」 息子の、こんな顔つきは今まで見たことがなかったからだ。

「どうした?」

「学校で何かあったのか?」

大学生にこんな質問をするのはおかしいが、何故かこの言葉が出てきた。

「…」
息子は、黙っていた。

「行きたくないという理由がなければ、お父さんも、お母さんもわからないし、とにかくその理由を教えてくれ!」

「…」

どれくらい時間が経過したかわからない。

こちらの質問に答えるどころか、息子はじっと私の事を睨みつけている。

「まあ、ゆっくり考えて見ろ?」
「時間はあるし…」

と、突然、息子は立ち上がり、「辞めさせてくれないなら、俺、この家を出て行く!」とリュックに服を詰め込み始めた。

「おかしい?」

しかし、いい子だと思って安心してたけど、やっと反抗期にでもなったのかな?という思いもあった。

「ダダダッ!」

息子は私の側をかけりぬけ、「ガチャッ!」と部屋のドアを開け、「ドドドッ!」と階段を降りた。

そして、「ガチャガチャガチャ」という玄関を開ける音の後、「バタン!」とドアが閉まる音が聞こえた。

2階から、リビングに行くと、妻が今にも泣きそうな顔をして立っていた。

「一体、何があったの?」

「…」

「お父さん、浩二を怒った?」

「いや、何も…」

「…」

まるで、私が悪いかのように妻は怒った口調で問いかけてきた。

「も~う!」

突然の息子の行動に動揺を隠せない様子の妻…

「ちょっと、捜しに行ってくる!」

「まあ、待て!」

「浩二も本当の大人に成りかけているようだし、男にも意地というものがある。」

「色々考えて、明日にでも帰ってくるよ!」

「何、言ってるのよ!」

「あの子、口では立派な事を言ってても、友達の所に行くわけでもなく、どこかを、うろうろ歩くだけなのよ!」

「母さんがそんな考えだから、浩二も、あんなふうに、言葉で自分の気持ちを伝えようとせず…」

「ガチャ!」

妻は、私の話を聞こうともせず、玄関から外に出ていった。

「ブル~ン!」「ブーーー!」

そして車に乗って、息子を捜しに出かけた。

30分くらいして、

「ブーーーン!」

「カチャッ!」

妻が帰ってきた。

「どうだった?」

「コンビニの中に居たけど、冷静に考えてみると、お父さんの言うように、大人になるいい機会かもしれないかなと思って、気がつかない振りをして帰ってきたの。」

そう言ってはいるものの、かなり気になっているようだ。

「トントントン!」

「お母さん、兄ちゃんどうしたの?」

「うーん!」

「大学辞めたいけど、辞めさせてくれないからって、家を出て行ったの。」

「ふ~ん、でもお母さん、いっつも兄ちゃんの事ばっか考えてるしねー!」

「そんな事ないわよ!」

「あなたの事だって、ちゃんと考えてるわよ。」

「そうかな~!」

「そうよ!」

「私なんか、学校は楽しいし、お兄ちゃん、何故学校行きたくなくなっちゃたんだろ? ね! お父さん!」

「…」

「やっぱり、連れて帰ってくるわ!」
妻は、また、車で息子を捜しに出かけた。

「ほら、やっぱ兄ちゃんばっか!」

そういいながら、娘も自分の兄の事が気がかりだったのだろう。

いつもなら、自分の部屋に帰るのに、この時は、リビングのTVをつけて、ソファーに腰掛けた。…