妻も息子の部屋に入ったきりで、2時間くらい経って、やっとリビングに降りてきた。


「お父さん、怒らないようにしてね!」


「何?」


「浩二が、大学を辞めたいって言い出したの?」


「え~っ?」


「何か学校であったのかな?」


「うーん?」


「よし、わかった、浩二と話してみる。」


「そうして、しかし、怒らないようにしてね!」


「怒るも何も、行きたくない理由を先に聞かないとなあ?」


「トントン!」


部屋のドアをノックした。


「...」

しかし、息子からの返事はない!

「浩二? ちょっと入っていいか?」


「...」


「カチャッ!」

ドアを開けて部屋に入ると、息子はベッドの上に座り、目をすえて私のほうを睨みつけている!」


一瞬、私の体が凍りついたような気がした!


「おかしい?」 息子の、こんな顔つきは今まで見たことがなかったからだ。


「どうした?」


「学校で何かあったのか?」


大学生にこんな質問をするのはおかしいが、何故かこの言葉が出てきた。


「...」

息子は、黙っていた。


「行きたくないという理由がなければ、お父さんも、お母さんもわからないし、とにかくその理由を教えてくれ!」


「...」


どれくらい時間が経過したかわからない。


こちらの質問に答えるどころか、息子はじっと私の事を睨みつけている。


「まあ、ゆっくり考えて見ろ?」

「時間はあるし...」


と、突然、息子は立ち上がり、「辞めさせてくれないなら、俺、この家を出て行く!」とリュックに服を詰め込み始めた。


「おかしい?」


しかし、いい子だと思って安心してたけど、やっと反抗期にでもなったのかな?という思いもあった。


「ダダダッ!」


息子は私の側をかけりぬけ、「ガチャッ!」と部屋のドアを開け、「ドドドッ!」と階段を降りた。


そして、「ガチャガチャガチャ」という玄関を開ける音の後、「バタン!」とドアが閉まる音が聞こえた。


2階から、リビングに行くと、妻が今にも泣きそうな顔をして立っていた。


「一体、何があったの?」


「...」


「お父さん、浩二を怒った?」


「いや、何も...」


「...」


まるで、私が悪いかのように妻は怒った口調で問いかけてきた。


「も~う!」


突然の息子の行動に動揺を隠せない様子の妻...


「ちょっと、捜しに行ってくる!」


「まあ、待て!」


「浩二も本当の大人に成りかけているようだし、男にも意地というものがある。」


「色々考えて、明日にでも帰ってくるよ!」


「何、言ってるのよ!」


「あの子、口では立派な事を言ってても、友達の所に行くわけでもなく、どこかを、うろうろ歩くだけなのよ!」


「母さんがそんな考えだから、浩二も、あんなふうに、言葉で自分の気持ちを伝えようとせず...」


「ガチャ!」


妻は、私の話を聞こうともせず、玄関から外に出ていった。


「ブル~ン!」「ブーーー!」


そして車に乗って、息子を捜しに出かけた。


30分くらいして、


「ブーーーン!」


「カチャッ!」


妻が帰ってきた。


「どうだった?」


「コンビニの中に居たけど、冷静に考えてみると、お父さんの言うように、大人になるいい機会かもしれないかなと思って、気がつかない振りをして帰ってきたの。」


そう言ってはいるものの、かなり気になっているようだ。


「トントントン!」


「お母さん、兄ちゃんどうしたの?」


「うーん!」


「大学辞めたいけど、辞めさせてくれないからって、家を出て行ったの。」


「ふ~ん、でもお母さん、いっつも兄ちゃんの事ばっか考えてるしねー!」


「そんな事ないわよ!」


「あなたの事だって、ちゃんと考えてるわよ。」


「そうかな~!」


「そうよ!」


「私なんか、学校は楽しいし、お兄ちゃん、何故学校行きたくなくなっちゃたんだろ? ね! お父さん!」


「...」


「やっぱり、連れて帰ってくるわ!」

妻は、また、車で息子を捜しに出かけた。


「ほら、やっぱ兄ちゃんばっか!」


そういいながら、娘も自分の兄の事が気がかりだったのだろう。


いつもなら、自分の部屋に帰るのに、この時は、リビングのTVをつけて、ソファーに腰掛けた。...