陰陽師 異変(四)

陰陽師 異変(四)

「浩二は、高校の時にバイトしてたのか?」

「バイトの経験はないですね。」

「そうだよな! 親父が俺の子供も含めて、あれこれ買ってくれてるし、小遣いも結構もらってるから、しなくてもいいいからなあ。」

「うん、助かってる。」
妻が相槌をいれた。

「それよりも世間のような、問題は別として、浩二の目が座ってるような気がしてならないんです。」

「何?」

「それならば、俺には答えが出せないぞ!」

「そうですね!」

「まあ、明日会社に行って、新人に聞いてみるから、この問題は、また、連絡することにして…」

「うん、お兄ちゃん、頼むわ。」

こうして、普通の会話だけして、義兄は帰って行った。

夕方になり、晩御飯の準備をしなければならない時間になったけど、妻は気になる事があるのか、いっこうにその場から立ち上がろうとしない。

「陰陽師さんが、来てからだよね?」

「うん、確かに、そうだな?」

「でも、何も無いって言ったんじゃあ?」

「そう、だから関係ないよね?」

「関係ないだろう?」

妻は、この話をしてから、納得したのか、晩御飯の準備にとりかかった。

19時になり、娘を呼び、ご飯を食べようとしたところに、息子が帰ってきた。

「早っ?」

「なんだ、これじゃあ家出じゃあないじゃないか?」

「おかえり!」

「ただいま!」

やれやれ、完全な取り越し苦労だったようだ。

「!」

息子の顔も、普通の時のようになり、とても素直な表情だった。

妻と顔を見合わせ、お互い、首を傾けた。

そして月曜日。

いつものように同じ道を通り、会社に到着した。

デスクに座ると、部長があわてたような顔をして、私の所にやってきた。

「おはようございます。」と、挨拶をした。

しかし、部長は返事もせずに

「黄金君!」

「はい!」

「ちょっと、この発注伝票を調べて見てくれ?」

「何かあったのですか?」

「伝票を見ると、3年前に退社した前任者の担当した工事伝票である。」

「これが何か?」

「この時の関係書類を全部持って23号会議室に来てくれ!」

「あ、はい! わかりました。」

書類を全部用意して、会議室に入った。

中に居るのは、直属の上司の部長と、購買課長、そして経理課長が座っていた。

「これが、その時の資料ですが?」

早速経理課長が資料を調べて始めた。

「やっぱり、そうですね!」経理課長はこう切り出してきた。

私にはさっぱりわからない?

「あっ! 黄金君はこれでいいから…」と、部長が言った。

3年前の資料を持っていったけど、国税か何かでひっかかったかな?

2時間後、部長から電話があった。

先ほどの資料の事は何も言わないが、部長は「ガミガミ」「クドクド」と、言いたい事を「ズケズケ」と電話の向こう側で言っている。

「はい! わかりました。」と言って、電話を切った。

わけも無く、上司から怒られたのは始めての経験である。

こういう時は、部長は、よっぽど、腹の虫の居所が悪かったのだろうと思うしかないと、あきらめた。

でも、何かふに落ちない…
土曜日から,何かに振り回されているようだ!

しかし面白くない。
今日一日も終わりった。

そして翌日の火曜日。
今日は、免許の更新に自動車運転免許センターへ行くため、有給休暇をとっていた。
朝から、小雨も振りだしている。

息子と顔をあわせ、

「今日は自動車運転免許センターに行くけど、学校が近いから乗っていくか?」
と、声をかけてみた。

息子は、眉間にしわを寄せ、

小さな声で

「うん。」と、うなずいた。

朝食もすませ、息子を後部座席に乗せ、先に息子の大学のほうへと車を走らせた。

「今日は、何時頃帰る?」

「…」

返事がない?

雑談をしようとしても、ルームミラーに写る、息子の顔は眉間にしわを寄せ、私のほうを睨みつけているようだ!

「また、おかしくなっているような?」

「どうした?」

「…」

時おり車のルームミラー越しに彼の顔を見ると、息子は、私を睨みつけいて、今にも私に襲い掛かってきそうな感じがして、「ブルブルッ!」と身震いが起こった。…