陰陽師 略取

陰陽師 略取

私が幼稚園の年中の時だった。
その日も、私は幼稚園から帰り、家にいると、「積君! 遊ぼ!」と、近くに住む、まさる君が遊びに来た。

「うん、遊ぼ! 遊ぼ!」

「行ってきまーす。」

「遠くに行っちゃあ駄目よ!」

「わかってる。」母の言葉に送られて、家を出た。

近くに公園がないため、遊ぶ場所は専ら、家の近くだった!

「きゃはは~!」

「ワーイ!ワーイ!」

こうして、まさる君と遊んでいる所に、他の友達の信君に理香ちゃんや洋子ちゃんが、私達の遊びの仲間に加わっていった。

「ガヤガヤ!」「ワイワイ!」

この年代はとにかく好奇心旺盛な年代で、父や母の普段話してることを真似してたような記憶が残っている。

こうして、いつものように楽しく過ごしていた。

「ねえねえ! お店にお菓子買いに行こうよ!」

「うん、そうしよう、そうしよう!」とまさる君が言った。

俺も、

「じゃあ、お家に帰ってお母さんにお金貰ってくる…」

「じゃ、僕も」と言って、まさる君もお家に帰った。

「お母さん?」

「加藤お店に行くから、お金ちょうだい!」

「はいはい、じゃあ、50円ね!」

「ありがとう、じゃ、行ってきまーす!」

こうして、お金をもらった私は、家を飛びだして、友達の待っているところへ駆けていった。

まさる君も丁度家から出てきたところで、こうして、いつものようにいつもと同じ行動に入った。

「ダダダダダ~!」

我先に到着しようと、皆、坂道を一生懸命走った。

「おばちゃん?」

「これ何?」

「これはね! こうして紙をちぎって口に入れてれば美味しい味がするんだよ!」

「ふ~ん?」

お店には、まるで魔法使いでも住んでいるようなくらい、小さな子供にはとても不思議なお菓子や変わった味のするお菓子などがいっぱいある。

触ってはこちらを触り、こういった動作を繰り返したのち、結局は冒険できずに、いつも親が買ってくれるお菓子を買った。

「おばちゃん、またね!」

「はいはい、またおいで!」

私達はお店を出て、一路、いつもの遊び場所に足を向けた。

坂道を登り、私の家の手前50mのところで突然「ドン!」と人にぶつかった。

「ごめんなさい」と言おうとする前に、左腕に痛みがはしった。

よくみると、知らないおばちゃんが、私の左腕を掴んでいる。

ぶつかったのでなく、腕を掴まれて引きよされたようだ!

ビックリして、声をだそうと思っていても、何も出ない。

しっかりと掴まれたその左腕も、ものすごく痛い!

「痛い!」

でも、声がでない!

友達は、気づかずに3mくらい先を歩いてる。

声はでないし、どうしてよいか、私にはわからなかった。

「僕?  おばちゃんと、一緒に行こう?」

その知らないおばさんは、優しく言葉をかけてきたけれど、私には、その顔はとても恐い顔に見えた。

「どうしよう?」

その時、まさる君が、私が居ないのに、やっと気づいてくれた。

「ダダダ」と駆け寄ってきたけど、まさる君もこの状況に気がついてないよう
だった。

理香ちゃんは、私の家のほうへかけて行き、後の二人は、私の側に来てくれた。

私の腕を掴んでるおばさんを見て、まさる君は、状況をつかめたようで、私の右腕を捕まえて、引っ張り出した。

そして、信君も洋子ちゃんも同じように、右手を持って、一生懸命引っ張り出した。

「おばちゃん、だめ~! 積君を連れて行ったら、だめ~!」

そこへ、私の母が駆けつけてくれた。

どうやら、理香ちゃんが母を呼びに言ってくれたようだ。

「すみません、うちの子が何かしましたか?」

その声で我に返った、そのおばさんはやっと左腕を離して、その場から逃げていった。

途端に、私も声が出るようになり、母がそばにいる安心感で、大きな声で泣くことも出来た。

側でこの話を聞いていた妻はビックリしたような顔で私を見ていた。

「もしかして、お父さんが化粧の臭いとかを嫌いなのは、そういう事があったからなの?」

私は、小さくうなづいた。…