陰陽師 番外編 そしてこの時も...

陰陽師 番外編 そしてこの時も…

「その時は必死だったんだ。」
「で、まず先に…」

「・・・」
その時に行った方法を話すのが恥ずかしかった。

「まず、その篩いの上に手を置いて、そして、斜めにしながら、その大蛇を。」

「その大蛇を、その篩いで、側の小川に追いやろうとしたんだ。」
「しかし、その大蛇、重くて、また、無防備になっているから、腰が引けて押すことが出来なかったし。」

「クスクス。」
妻はその腰が引けた姿を想像したのだろうか?
ちょっと小ばかにしたような笑みをふくんでいた。

「二人とも大きな声ばかりだして、結局その方法はやめて…」
「次にやったのは、1人が篩いを斜めに持って、もう1人が、側にあったスコップですくおうとした。」

「スコップって、そんな小さなもので?」
あきれた妻である。
移植コテと勘違いしているようだった。

「違う、違う。」
「工事現場にあるような、デカイスコップだよ。」

「あ~、なるほど。」
顔が赤くなっているところを見ると、やはり、移植コテを想像していたようだ。

「で、そのスコップをその大蛇の下、腹側に差し入れたんだけど、痛かったのかな?」

「バチバチバチッ!」
「バチバチバチッ!と、クルクルクルクル回り始めてな。」

「そのバチバチッ!って、なんの音?」

「ああ、その音は、その大蛇が、クルクル回るたびに、地面にあたる音なんだよ。」

「・・・」
妻は気味悪そうな顔になっていった。

「そうかっ!」
「大蛇と格闘といえば、スサノオノミコトじゃない。」
「お父さんの、守護霊様は出雲の神様って、陰陽師さんも言ってたしね。」

ふと、その妻の言葉で、スサノオノミコトノ、八頭の話を思い出した。
そうか、スサノオノミコトは出雲の神様の先祖だし…

「じゃあ、うさぎについてはない?」

「うさぎ?」

「そう、大黒様は、うさぎを、ほら…」

「因幡の白兎ってこと?」

「そう、だから、うさぎさんを助けたとか?」

「うさぎね~?」

「う~ん?」
先ほどまで話していた、その大蛇の話は忘れ、うさぎの思い出について何かないかを思い出していた。

「あったけど、それは干支のうさぎ年に。」
この話は思い出したくなかった。
というのは、うさぎ年といえば、良くないことばかりが起こっていたからだ。

「うさぎ年って変な話じゃないの?」

「そう、確かに、中学生のときに友人の家の裏山に入って遊んでいて、その時に野うさぎを追いかけたくらいだし?」

「そんなのあたし達の時代なら誰でも経験しているかも?」

「そうそう、だから、うさぎについては、その干支のうさぎ年くらいの事しか頭に浮かんでこないんだよ。」

「そっかあ~! で、その干支って関係あるのかなあ?」

「うん、それがあ、裏年と考えれば理解できそうな気もするし…」

「裏年って、経営者みたいじゃん。」

「あははっ!」
「株主総会かよ!」
と、思わず突っ込みを入れたが、この裏年にはとにかくよくないことばかり起こっていた。
まず、ゴールデンウイークの期間中に野球部の合宿に行く前日、友人達ととある、海岸へ遊びに行った。

 

その時に、この海岸の岩場で遊んでいた時に、岩牡蠣を見つけた友人が、この牡蠣を海水でシャブシャブと洗って生で食べると美味しいんだと説明してくれた。
そして、その友人の言うとおりに洗って食べたのだが…

「お父さん?」

「うん。」

「何か悪いことでも?」

「うん、うさぎ年にね。」
「牡蠣を食べて、当たっちゃったんだよ。」

「すごかったの?」

「ああ、丁度、翌日に合宿に出かけたんだけど、その場所が禅寺で…」

「それって普通じゃないの?」

「ああ、普通なんだけど、その晩に、ほら、そういった所は早く寝なければいけないじゃん。」
「しかし、お腹が痛くて、寝られなくて、そして、どうしてもトイレに行くようになるし…」
「このトイレがまた、外にあって、そのトイレの小窓から、ほら、お墓が見えるんだよ。」

「・・・」
妻は固唾を呑みながら聞いている。

「でね。」
「霊感があるじゃん、だから、気配を感じちゃったんだよ。」
「それも、尋常でないくらいの数のね…」

「あ~、もう思い出したくない、この話は。」

「いいじゃん、もう憑き物いないんだから。」

「あ、うん、それはそうだけど。」
確かにあの時は、尋常でなかった。
小窓の外にオーブというか、小さく光るものがぽっと浮かび上がってくるし。
それに、その場所が、お寺というのも手伝って、余計に恐怖も感じていた。

朝までに、4~5回はトイレに行ったような記憶が片隅に残っている。

「その晩だけだったの?」

「いや、それが、あと3日も続いたんだ。」

「ずっと、調子悪かったの?」
「それと、やはり夜中だけなの?」

「そう、次の晩は、ぼ~っと、白く浮かび上がるものが見えたんだ。」